当教室に通う子供のIQを測定/1年後に平均8p上昇/集中力や情報処理、視覚的な記憶を反映する処理速度が上昇
一般社団法人ニューロンは、横浜市立大学附属市民総合医療センター脳神経外科教室 東島威史医師による研究に協力します。
ニューロン子供麻雀教室にて希望者を対象に「IQ検査」「性格検査」を経年的に実施。麻雀が脳に及ぼす影響を分析・研究します。
脳外科医であり、現役の競技選手でもある東島威史氏は「子供の知能指数に対する麻雀の影響」というテーマを掲げて、ニューロン子供麻雀教室の協力のもと、32ヶ月に渡って研究を行いました。そして2022年9月27日、研究成果を心理学の論文としてまとめたものが、海外の学術雑誌「Frontiers in psychology」に掲載されましたのでご紹介します。
麻雀教室に通い始めた子供たちの1年後の知能指数の変化を、ウェクスラー式知能指数検査によって測定したところ、平均して8ポイントの知能指数上昇を認めました。特に「処理速度」という、集中力や情報処理の速さや視覚的な記憶を反映する指数が上昇致しました。これは過去の論文と比較しても上昇しており、麻雀による脳機能強化を反映している可能性が示されました。今後はさらに大人数での研究が行われることで、麻雀が知能にもたらす影響についての分析、考察が深まることが期待されます。
■論文(全文・英字)Frontiers in psychology
■日本語訳に便利なサイト DeepL
■公開サイト Frontiers in psychology
■公開サイト概要 wikipedia
■公開サイト評価 impact factor 4.23
※impact factorとは自然科学や社会科学の学術雑誌が各分野内で持つ相対的な影響力の大きさを測る指標の一つ
本研究は、3人または4人で行う知的活動を伴うテーブルゲームである麻雀が、子どもの知能指数(IQ)に及ぼす影響について検討したものである。対象は6歳から15歳の子どもで、子ども麻雀教室入会直後と入会1年後に、WechslerIntelligence Scale for Children FourthEdition(WISC-IV)を用いてIQを評価した。分析対象は20名の子どもたちである。初回評価時の平均年齢は9歳6カ月であった。さらに、1年後の検査も実施した。このグループのIQの変化を、年齢層及び検査間隔に差がない文献データと比較した。初回検査時と1年後検査時の20人の総合IQの平均値はそれぞれ106.05と113.75であり、統計的に有意な増加を示した(p<0.01)。サブスケール指数では、言語理解指数(VCI)、処理速度指数(PSI)ともに、それぞれ100.6から106.75、108.05から119.05と統計的に有意な上昇を示した(p<0.01)。また、分析対象となった子どもたちのPSIは、過去のデータと比較して、統計的に有意な増加を示した。本研究は、幼少期に麻雀教室に参加した子どもは、WISC-ⅣのPSIスコアが上昇することを示唆している。
ニューロンの池谷代表をはじめ、講師の皆様、ボランティアスタッフの皆様はもちろんのこと、研究に参加させて頂いたご家族の方、何よりも頑張って検査を受けてくれた子供達に、深く御礼申し上げます。WISCによる知能指数の検査時間は長く、1回の検査につき1時間30分かかります。その間、初対面の大人と密室で何種類ものテストをやらされる子供達のストレスは決して軽いものではないこと、容易に想像は出来ます。本当に、この論文が出来上がるまでに一番頑張ってくれたのは、参加して頂いた子供達だったと思っています。皆さん、本当にありがとうございました。
今回論文として出版されたことで、ここで過ごした時間が、遠い未来まで学術データとして残っていくことを、とても嬉しく思います。ですが論文に出来たデータなんて、ほんの一部です。この子供麻雀教室で学んだことは、まだまだ数多くあります。子供達が卓を囲んでいる時の表情、声のトーン、他の子供たちとの接し方、そしてそれらが時間の中でどう変わっていくか。僕はこの論文を読み返す度に、行間に込められたその時間を思い出して、懐かしく、希望に満ちた気持ちになると思います。研究に携わる中で同じ時間を共有した全ての方々が、このような気持ちを抱いて頂けるといいな、と思います。コロナには本当にみんなで参りました。検査が開始された直後にロックダウンで、新規の生徒さんが激減し、教室も休講に追い込まれました。スタッフの皆様の努力で、一度もクラスターが起きずに教室を運営出来たこと、本当に素晴らしかったと思います。
論文についても少し捕捉させて下さい。この論文で示されたことは ①「子供麻雀教室に1年通った子供の知能指数が上昇した」ことで、②「その原因が麻雀によるもの」かどうかは、厳密には示されていません。①を示すのが、今回の研究デザインの限界であり、その原因が何か、までを示せたとは言えないと思います。ですが、著者としては、やっぱり麻雀によるものである、と意見は述べさせてもらっていますが、これについてはまだまだ議論の余地はあります。もっと言えば、このデータはニューロン子供麻雀教室でのみのデータであり、例えば他校で行った場合は、違う結果になる可能性もあります。それは、この論文を読んで、疑問を感じた誰かが、あるいは僕自身が、それを評価していければいいと思っていますし、そうした議論が活発になること自体が、業界にとってとても良いことだと感じています。
この研究は、元々、あるたった一人の「麻雀を子供のうちにさせるのは抵抗がある」という、2020年前後では恐らく大多数で真っ当な御意見に対する疑問からでした。もちろん、「麻雀は知能指数が上がるから子供のうちにやらせよう」なんていう意見はナンセンスで、これはきっと業界の誰も望んでいないと思います。
ただ、「麻雀は大人になってから」ということも同じじゃないかと思っています。子供に麻雀をやらせると不都合なことが起こるかどうか。論文では全然伝わらないと思いますが、一目でも直に触れた人達には、それがいかにナンセンスかお分かり頂けるかと思います。
最後の知能指数検査の日、いつかIQ検査をした子が、ボランティアスタッフとして働いてくれていました。僕はとても嬉しくなって、つい話しかけちゃいました。
検査に協力してくれたみなさん。知能指数を伸ばす要因をたった一言に集約すると、「新しい経験」です。あの日麻雀教室へ入会したように、この先もたくさん、未知なることへ挑戦して下さい。その中で、出来れば傍に麻雀をおいてくれると嬉しいです。そしていつか、しびれるような麻雀を打ちましょう。
ニューロンスタッフの皆様、検査にご協力頂いた子供達とご家族の皆様、その他検査にご協力頂いた全ての皆様。忘れられない3年間、本当にありがとうございました。皆様の益々の御発展、御活躍を、心よりお祈りしております。
2022年9月 もうすっかり秋の気配のする横浜で少しだけ冷めたコーヒーを飲みながら 日本プロ麻雀協会所属/機能脳神経外科医 東島威史
■この論文が横浜脳神経外科研究会学術集会の【J.C.Hepbeurn Award(一般演題部門)】で表彰されました。
新規応募は締め切りました
検査2回目を予約制で実施